看護職を対象に行政主導で賃金が引き上げられる事となった。常々医療従事者の賃金が低いと思って来たが、今回の対応には反対である。内容は以下のとおりである。
「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(令和3年11月19日閣議決定)に基づき、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関(※1)に勤務する看護職員を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、収入を1%程度(月額4,000円)引き上げるための措置(※2)を、令和4年2月から前倒しで実施するために必要な経費を都道府県に交付する事業です。
※1「地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関」:一定の救急医療を担う医療機関(救急医療管理 加算を算定する救急搬送件数200台/年以上の医療機関及び三次救急を担う医療機関)
※2 看護補助者、理学療法士・作業療法士等のコメディカルの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認める。
いろんな考え方があると思うが、現場で多くの職員と病院改革を進めて来た私からすると、賛成しかねるものである。理由は次のとおりである。
(1)対象は看護職となっている事。コロナ患者への対応は、何も看護職だけでは無い。※書きで看護補助者等、コメディカルも病院の判断で可能と記載されているが、病院には40を超える職種があり、その職種全部が直接、間接にコロナ対応に奮戦してきたのである。にも拘わらず職種を特定して支給するのは、その他の職種の頑張りを評価しないという事である。
外来などは、事務職もコロナ患者と接する事も多い。病院はチームで無いと機能しない。一部の職種を優遇する事はチームワークを崩すものである。この賃上げの対象とならない職員は、今後コロナ患者への対応を拒否する事はしないだろうが、気持ちよく出来なくなる。例えば、放射線撮影をするのに、通常は看護師が付き添って放射線科に行くのが一般的だが、この間病棟が忙しいという事で、放射線科がお迎えに行ったりして病棟のサポートをしていたところも少なく無いはずである。これはほんの1例で、部署が協力して支え合ってこの間困難を乗り越えて来たのである。
(2)対象となる施設が、救急医療等に一定の貢献をしているところという事である。日本は医療提供体制の役割分担が大きく進んだ。これは、急性期病院がその本来の役割を果たそうとすると、亜急性期病院、療養型病院、ケアミックス病院等が頑張って、普段受入れ出来ない患者を受け入れてくれる事が必要である。またそのためには、退院を促進し受け入れる病床を確保する事も必要である。この連携・協力が無いと、急性期病院の病床に空きが無くなり、新入院の受入れが出来ないのである。要は急性期に限らず、多くの医療機関が頑張ったにも関わらず、それらの看護職には賃上げがされないのである。
(3)看護補助職は病院の判断で支給してもいい事になっている。最近の病院で困っている事の一つに看護補助職員が集まらないのである。それは、介護施設等であれば、介護職員の給与が低いという事から、介護職員の処遇改善補助金等が支給されており、病院の看護補助者より給与が高い傾向にあるからである。病院の看護は看護補助者抜きでは考えられないと言ってもいいのであるが、余りにも軽視されている。
(4)民間病院と公立病院では、給与格差がある。また、大規模病院と中小規模病院でも給与格差がある。今回の賃上げは、民間の中小規模で対象となるところは少なく、その給与格差を拡大するものとなる。
以上私なりに特徴的な事を記載したが、客観的に多角的な視点で出来ないものかと思う。

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