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医師の働き方改革は慎重に!②

前回は現在進みつつある医師の働き方改革が進むと、➀医療法上の医師の必要数を満たせなくなる病院が出て来ること、②当直医の不足や診療体制の縮小をせざるを得なくなる病院が出て来こと、③医師の収入が大きくダウンすることなどについて書きました。


実は前回書き忘れましたが、老健施設では常勤換算で1名の医師の配置が義務付けられています。毎日非常勤でつなぎ、どうにかこの1名を満たしている老健が多いのも現実です。ところが老健の調査なども私が知る限りではされていません。実態が把握されずに、実行されることが決まっている法律です。


今回は少し視点を変えます。

医師の業務軽減で大きく力を発揮しているのが、医師事務作業補助者の役割です。この効果は実に大きく、私がかつて勤務した病院の中では、医師が記載する書類の下書きを約8割までカバーしました。非常に多くの医師から喜ばれました。今もこの取り組みは多くの病院で進んでいます。進んでいるのは効果があるからですが、もう一点は医師の業務軽減の委員会を設置し、業務軽減の計画を作ることがこの医師事務作業補助者を点数として診療報酬上請求出来る条件としているからです。


ところが、この医師事務作業補助者を診療報酬として請求出来る条件として、一般病床であることとか、緊急入院の患者数が何人以上というしばりがあります。言い換えますと、療養型の病院や緊急入院の少ない病院には配置しても診療報酬上は評価されない、もっと言えば業務軽減の必要は無いということです。労働時間の問題を病院の機能によっては問題とする病院、問題としない病院があるようにも見えます。


医師の働き方改革は、共通して医師全般について検討されているのではなく、一部の医師の働き方だけを変えようとしているとも言えます。私たちが診療を受けるのは身近な病院が多く、そこが一般であるか療養であるかは意識しません。基本同じ医療が受けられると思っていますが、構造的に違うものにしつつあるように思えます。


また、開業医の先生の働き方にも触れていません。毎日9時から診療し、午後に休憩を挟むとしても遅いところは夜10時ぐらいまではクリニックにいることも少なくは無いはずです。医師によっては、午後に往診に行かれたりします。こんな働き方は問題無いのでしょうか。


大きな病院では外来を抑制され、地域の開業医に患者は返されます。私達の日常管理は開業医の医師に掛かっています。更に掛かり付け医制度を推進すると言われ、開業医の負担は増すばかりです。医師事務作業補助者も置くなら自腹を切るしかありません。統計では、開業医の2割は70歳以上です。


医師の働き方改革はもっと考えるべきところがたくさんあると思います。経済優先で、その枠の中でだけしか取り組まれない医療政策、まだまだ砂漠の多い日本だと思えてなりません。


画像はCanvaの画像を加工



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