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情報収集とその共有

「コロナ禍で抗がん薬の副作用が減少」これは、今日目にした2022年8月8日付けMedical Tribuneの記事です。記事の中の一文を紹介させていただきます。

 

 金沢大学泌尿器科教授の溝上氏は「COVID-19流行中に、発熱性好中球減少症の発症頻度が流行前の15分の1に減少した。これは、流行中はそれ以前よりも明らかに患者や医療従事者の衛生管理、面会制限が徹底された結果、外部から患者への細菌やウイルスの持ち込みが減り、従来の抗がん薬治療による好中球が減少する期間での感染が減少したからではないか」と推察。さらに「今回得られた知見と徹底した衛生管理は、どの診療科においても今後、抗がん薬治療を施行する上で発熱性好中球減少症対策に活用できると考えている」と展望している。


コロナ下でも医療関係者は冷静な目で臨床の現場で起こっている状況を分析しています。これを読んで、病院の中で働いていた者としては、複雑な気持ちになります。がんの術後はICU病棟で治療することが多くあります。そのICUは感染対策には非常に力を入れています。


ICU病床は重篤な患者の治療をするための病室であるため、「集中治療部設置のための指針」に沿って作る必要があります。その中にはクリーンな環境を必要とするため、空気清浄度について次のとおり記載されている。

「集中治療部にはISO(国際標準化機構)基準によるクラス7、NASA基準によるクラス10,000~100,000程度の清浄空気が供給されることを推奨する。」


これ程の環境の下にあるICU病床ですが、コロナ下で感染対策が徹底されることで、「発熱性好中球減少症の発症頻度が15分の1になっているということで、今まで何をしていたのかという疑問が出る程であり、各医療機関がこの提言を受けコロナ感染が収束した後、これまでの感染対策を見直す必要があることが分かります。


一方、こういう情報が会議のテーブルにどれだけ乗るだろうかと疑問を感じるところです。日本医療機能評価機構からは定期的に医療安全情報などが定期的に出されていますが、それらが院内で共有され都度対策を検討する病院というのは決して多くはありません。皆さんもテレビなどで医療事故の報道があった時に、「またやったの」と思われたことがあると思います。


医療関係者は医療に関係する情報を常に取得し、自院にフィードバックし職員間で共有する習慣を付けて欲しいと思います。医療事故を防ぎ、より新しい知見の中で医療を提供することが求められます。これは誰でも同意出来ることだと思いますが、この次が問題です。こういった情報を院内で、モニタリングし報告するシステムを作らないとうまく機能しません。


医療安全のことは医療安全委員会にモニタリングと報告を義務付けます、感染でしたら、感染対策委員会、医療機器でしたら医療機器管理委員会や臨床工学室。それぞれの委員会規定や部署の業務分掌に落とし込み継続して取り組むが続くようにして行く必要があります。医療事故を防ぎ、最新の知見に基づいた診療が出来るように頑張って欲しいと思います。


画像はCanvaの画像を加工

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