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医療安全対策②対策

医療安全対策と感染対策は医療機関運営の大きな柱となっていると書きました。これはその必要性を認めた医療機関だけが取り組むという事では無く、医療法の中ですべての医療機関が取り組まなくてはいけないという規定があります。


医療法の第六条の十二に以下のように記載されています。

<第六条の十二> 病院等の管理者は、前二条に規定するもののほか、厚生労働省令で定めるところにより、医療の安全を確保するための指針の策定、従業者に対する研修の実施その他の当該病院等における医療の安全を確保するための措置を講じなければならない。


そのため、この規定を拠り所として、1年に1回行われる保健所の立ち入り検査では、医療安全対策が適切に行われているかが、チェックされています。診療所なども本来は検査されなければいけないのですが、数が多いということで保健所が入ることは殆ど無いという状況です。


では保健所ではどこをチェックするのか。具体的には、医療安全対策委員会があり、活動をしているか。医療安全の研修会を行い、職員の8割以上が参加しているかがチェックされます。そのため、この保健所の立ち入り検査の日には、医療安全対策委員会の名簿、会議記録(会議は概ね月1回以上開催されているか)、医療安全対策の研修資料と参加者名簿が確認されます。


しかしながら、実際のところ具体的な取り組みがどこまで実行されているかは、そこからは見えるものではありません。私も多くの病院で医療安全委員会に参加して来ましたが、病院毎にその内容が大きく異なっています。インシデントやアクシデントレポートの件数が多くて集計システムを導入し、集計結果をグラフ化し分析しその対策を委員会で検討しているところや、レポートの少ないところではレポートを1枚ずつ読み上げ個々対策を検討するところなど様々です。


いずれにしても管理者が本気で取り組んでいないと医療安全の取り組みは進みません。自院には医療安全の専従者がいる。毎月定期的に会議が開催され分析もされているというだけではダメだと思います。自身が積極的に取り組むことが必要です。では、具体的にどこが問題か。


1)とにかくレポート件数を増やす

インシデント・アクシデントレポートが増えれば、問題の認識が増えます。まずここからです。小さなインシデントが大事故に繋がるは、医療従事者であれば誰もが知っている言葉です。そのため、私も二度呼びとかに拘ります。たかが二度呼びですが、このミスもレポートに上げなければなりません。

レポートを書く時間さえも無いというふうに思っている人もいますが、それも工夫です。レポートを出さないと患者さまの安全は守れ無いのです。


2)現場を見る、職員を見る

うちはよく取り組んでいると言っても、レポートの数が少ないとよく取り組んでいるとは言えません。現場が見えていないとも言えます。レポートの件数が多いところは管理職がスタッフをよく見ていて、「今のはマニュアルと違う」とか「確認が足りない」と日々言えています。そしてレポートを促す。自覚に任せてレポートをただ待つだけでは増えません。逆の発想ですが、前回のブログで触れた1病棟レポート50件を病院全体で意識すれば違ってくるはずです。もっと、現場を見ざるを得なくなります。ラウンドをしてください。


3)科学的な分析

当然のことですが、今後気を付けるというのは対策ではありません。どうしてインシデントやアクシデントが発生したのかを突き止めないと解決にはありません。原因を突き止め、その原因を取り除く事がまず基本です。現象だけを見て、その現象の対策を考えないと再発は防げません。


4)実行力のある効率的な対策

よくあるのが安易な対策。例えば、転記ミスがあった。「気を付けましょう」で終わるのが一番ダメな対策。次にもう一人の目を通し、そのミスをチェックする。ここまではいいですが、また転帰ミスがあった。更に3回目のチェックを入れる。こうすると、人手ばかりが掛かります。現場では遊んでいる人がいないので。全体が更に雑になったりしてリスクが高まります。


5)医療安全委員会の決定を周知する

医療安全委員会ではしっかり議論をしていても、その結果の追跡が出来ていないことが多くあります。

間違いを減らすために手順を見直した時には、マニュアルの変更と、変更した事の周知が必要ですがこのマニュアルの変更と周知まで。管理職が確認するところまでの仕組み作りが必要です。


6)他の病院の事例を見る

ネットには多くの病院の事例があります。また、事故のトレンドなども分かります。公益財団法人日本医療機能評価機構などのメール会員となり医療安全対策の情報が届くようにする事もとても有益です。


7)患者さまの視点で見る

これはとても重要な視点です。もちろん医療サービスを提供する側の視点も重要ですが、サービスで受ける側の視点を忘れてはいけません。これも先日の入院で気付いた事ですが、トイレットペーパーの補充分の設置が不衛生でした。まだ新しい病院でしたが、トイレペーパーの補充分を置いておく場所が無いため、スチールの籠に入れて床の便器の横に置いていました。男女兼用で当然飛び跳ねが懸念されます。O157の感染で全国的にも問題になった経験が活かされていません。自分が患者さまのトイレを利用すればすぐに分かるのでは無いかと思います。


みなさんでしっかりと考えて欲しいと思います。


画像はCanvaの画像を加工

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